日本独自の進化を遂げた「だし」
「だし」とは?
動物性、植物性の材料を煮出したり、水に浸して旨味成分を抽出した汁のこと。
日本料理では、かつおだし、かつおと昆布のだし、煮干しだし、昆布だし、しいたけだしなどがある。西洋料理ではブイヨン、フォン、中国料理では、湯(タン)という。
調理用語辞典より
日本では縄文時代から「煮る」という技術が用いられ、人々が魚介類などを煮た際に、煮汁も料理に活用していたと考えられます。その後「焼いた魚を干しただし」などが生まれ、次第に「だしをとる」という概念が形成されていきました。そして、7世紀の昆布やかつおの「だし」の登場以降、日本の「だし」は進化しつつ多様化してきました。
西洋のものと比べてみよう。日本料理の「だし」の特色。
時間をかけ、味を積み上げていく西洋・中華料理の「だし」に対し、日本料理の「だし」は、わずか数分でエッセンスだけを取り出します。しかし「だし」原料の生産には、かつお節で半年、昆布で2年以上かけるものも存在します。素材の良さを引き出す日本の「だし」は、まさに日本料理の中核をなすと言えるでしょう。
使っているものから、煮出し時間まで。日本と西洋の「だし」には、これだけ違いがあります。
日本料理の「だし」の特色(例)
素材そのものの味を活かした調理が好まれてきました。植物性の素材には動物性のだしを用い、動物性の素材には植物性のだしを使って相互のおいしさを補い、調和をはかるようなだしの使い方も古くから工夫されています。
素材自体が強いうま味を持つ肉料理が中心になるため、だしを加える調理法は多くありません。素材の風味を強調するため、肉料理には肉からとっただしを、魚料理には魚からとっただしを加えるというように同じ材料からとっただしを使うことがあります。
参考文献
「調理用語辞典」(社)全国調理師養成施設協会編 調理栄養教育公社
「辻勲の味の旅」辻勲著 PHP研究所