山川:こちらは、中野で長いですよね。なぜ14 時から開店なんでしょうか?コロナで客層の変化などありましたか?
黒田氏:最初、初代のおばあちゃんがここで炭を売っていたみたいで、それでこういう商売をやりたいと昭和37年頃にお店を始めて、今年で創業60年ほどになります。14時からの開店は、前の国鉄なんですけど、中野に車掌区がありまして、国鉄だから夜勤とかあるじゃないですか。夜勤明けのお客様が結構いらっしゃって、朝の11時からやってたんです。当時は、同僚とお酒飲むのが一番の娯楽だったみたいです。コロナが始まった頃は、年配のお客様が全然いらっしゃらなくなって、その時は若いお客様が結構多かったんですけど、今はもうコロナ前のような感じに戻ってきましたね。14時に開店すると、団塊の世代の方が早くから入ってくださったり。お客様は、地元の方や中央線沿線の方が多いですね。
写真)昔懐かしい雰囲気の入り口を抜けると、明るく広々とした居心地の良い店内
山川:鮮魚が中心のお店ですが、温暖化でなかなか魚が獲れないとか、食材の高騰や人材など、ご苦労されていることはありますか?
黒田氏:60年くらいやってるから、仕入れは、河岸にお任せしています。昔からの付き合いで、目利きの方が部門部門でいらっしゃるから。燃料の油が値上がってるので、自然と高くなりますよね。人材に関しては、若いなり手がいないかなと考えているところなので、ずっと募集はしています。日本料理なんて、これからは継承していくのが難しいと思いますよ。有名な料亭とかならなり手がいるかもしれないけど。うちらの業界は追い回しと言って、若手は昔、十何時間も働くのが当たり前だったけど、今はそんな時代じゃないからね。若手が入らないし、続かない。入ってもすぐ辞めてしまうので、上がやらないとね。だから、20年近くやっていても追い回しをしている方、いっぱいいますよ。
写真)専務の黒田氏/外から見えるショーケースに市場直送の旬の鮮魚がずらり
山川:常連のお客様を飽きさせないように旬の食材で新しいメニューを考えたり、工夫していることや秘訣などありますか?
黒田氏:うちね、春夏秋冬で旬のものがあって、受け継がれているメニューを毎年繰り返してやってるから、新メニューを考えたりとかはあまりしないです。宴会用のメニューは、大体季節ごとにあるけど、常連の方々の宴会では好みが分かるので、合わせたものをお出ししています。お店のオリジナルで、自家製ポン酢や自家製かに酢とか、卵とサラダ油で自家製マヨネーズを作ったりだとか。やっぱりそれがお店の味。和食の店だから、だしは基本だと思っているんで、朝一の仕込みでかつお節とさば節で引いています。前のカウンターの黒い短冊はグランドメニューで、先代から受け継がれた創業当時からのものなんです。白い短冊は今のおすすめで、旬の期間限定のものです。今は印刷しているんですけど、前は経木にマジックで書いていました。
写真)旬の一品は、瑞々しくあっさりとした味わいの初がつおの刺身/自家製マヨネーズのかにサラダも絶品
山川:調味料などの情報は、問屋さんからですか?また、味の素の調味料はお使いでしょうか?使い方のアドバイスなどありましたら、教えてください。
黒田氏:調味料の情報は、セールスに来られる方がいらっしゃらないのでないですね。味の素は、使わせてもらってます。味の素に関しては、初代のおばあちゃんと一緒に働いていた時、冬の鍋料理で、ふぐちりがあるんですけど、みんなでふぐを食べたあと、最後に雑炊を食べるじゃないですか。おばあちゃんがお客様に雑炊を作る時に、雑炊のベースで、塩とほんのひとつまみの味の素を掌に取って、ぱっと入れるんですよ。それを入れるのと、入れないのとでは、味が全然違うんですよね、不思議なもんで。今でも覚えてますよ。40 年くらい前の話だけどね。その雑炊は美味しかったね。
写真)日本料理一筋の黒田氏