山川:店名の「ブラカリ」の由来と、斯波シェフのプロフィールを教えてください。
斯波氏:僕は、イタリアのトスカーナで修行してたんですけど、そこの二つ星レストラン「リストランテ ブラカリ」で働いていました。オーナーと家族ぐるみで仲良くなって、もし自分で店をやる時はブラカリを継承したいと思い、ブラカリの名前を付けることを許していただきました。調理師学校で、西洋料理を学んでいたんですが、主に授業がフランス料理で、ほとんどイタリア料理の授業がなかったんですね。当時イタリア料理に興味があり、イタリア料理をやろうかなと思っていましたので。西浅草にあったイタリア料理店で長くやっていたんですけど、伊豆に行き、そこからイタリアに渡って修行をして、戻ってきて横浜にいたんですが、浅草でのお話を頂き、土地勘もあるので、ここ花川戸で、ブラカリをオーブンしました。
写真)浅草の住宅街に佇むイタリア料理店「BRACALI」/ゆったりとした店内で本場仕込みのイタリア郷土料理が味わえる
山川:コロナや物価高、人材確保など、いろいろなご苦労があるかと思いますが、斯波シェフのところでは、どうされていますか?
斯波氏:アルバイトは、奇跡的にスタッフが来てくれましたが、人員不足って、これからずっと続くと思うんです。20代のキッチンスタッフが入ってくれたら全部教え込んで、また他に行って経験を積んで、戻ってきてくれたらなと思うんですけど、その若手がいないんですよね。浅草周辺のシェフは、土地柄なのかつながりが多くて、仕事が終わって飲みに行くにしても、情報交換も兼ねて、知り合いの店に行ったりしています。食材やアルバイト、人員についての話をしたり。問屋からも情報をもらったりしていますが、価格改正で大変みたいで、値上がりの情報しかないですね。うちはジビエを出しているんですけど、友人が狩猟をしているので、そこから仕入れてたりしています。野菜類は、その時期のものを使っています。
写真)トスカーナに来たような「BRACALI」の前で、斯波シェフと
山川:先ほど調理していただいた5月の旬食材あさりを使った一品なんですが、ポイントなどありますか?他にあさりを使った料理やこだわりなど教えてください。
斯波氏:リコッタチーズとペコリーノロマーノという塩気の強いチーズを合わせてニョッキ状にして、あさりとトマト、フランス産のそら豆と合わせました。本来、ペコリーノロマーノと魚介は、あまり合わせることはないんですけど、イタリアの師匠が合わせていたので。結構、魚介とチーズを合わせないって言うんですけど、一概には言えず、ドリアにだって使うし、決して合わないわけじゃないんですよね。他のあさり料理は、オーソドックスですが、ボンゴレですね。イタリア人は、スパゲッティボンゴレのあさりを最初に殻から全部外して食べてますね。でも、殻付きあさりじゃないとだめという考えもあります。イタリア料理は、基本的に地産地消なので、その土地のその時期のものを使った料理を重んじる傾向にあるんです。これを作りたいから、この素材を取ろうじゃなくて、この素材が出てきたので、このメニューを組み立てようと考えます。うちでは、イタリア郷土料理を北から南までバランスよく、うちではお客様に選んでもらう感じです。
写真)旬のあさりをチーズのニョッキと合わせた、食感が楽しい一皿。本格的で洗練されたイタリアン。
山川:イタリア料理で使う調味料で、日本にはあまり馴染みはないけど、これは欠かせないなどありましたら、教えてください。調味料の情報はどこで入手していますか?また、味の素さんの調味料について上手な使い方などあればお願いします。
斯波氏:コラトゥーラというイタリアのいわしの魚醤ですかね。それは、ポイントで使うと締まると言いますか、すごくしょっぱいんですけど、香りがいい。高いですけどね。今、国産で瀬戸内のコラトゥーラがあるんですけど、それをたまに使ったりします。調味料は、業者さんが提案してくれたり、小さなインポーターも多いので営業に来たり。賄いで使ってみて、味見をして、じゃあ使ってみようかなと。あとは、SNS で知り合いのレストランが使っているものを見て、気になったものは検索したりしています。味の素さんの調味料は、材料高騰や働き手が不足していく中で、調理の技術が高くないパートやアルバイトの方が切り盛りしているお店では、使い勝手がいいですよね。味がぶれずに決まりますから。
写真)国内外のイタリア料理店で腕を磨き、日本人で唯一イタリアミシュラン2つ星の「BRACALI」の名前を許された斯波シェフ