《しもつけ荘》は、栃木県内最大規模の施設で、毎日約800食の食事を調理しています。平成16年に厨房の改築を行い、クックチル方式を導入。隣接した《介護老人保健施設みなと荘》やデイサービスの食事も、一緒につくっています。今回、お話を伺ったのは、主に献立作成・発注を担当されている栄養士の柏原さんと、主に利用者さんからの聞き取りや栄養ケアを担当されている管理栄養士の大垣さんです。
まずは施設の特徴である、クックチルシステムならではの苦労や工夫を伺いたいと思います!
写真)食数が多いので、コンベアーを使ってトレイメイクされています。
ーークックチルシステムの良いところはどこですか?
「クックチルシステムの特性上、スチコン・ブラストチラーは毎日活用していますが、カボチャやサツマイモの形がキレイに仕上がるし、青物など短時間で仕上がる素材は途中から入れられるので、効率よく作業が進められるところはすごいと思います。」
ーーこちらの施設は、盛り付けた後に食器とトレーが反応して加熱(電磁誘導加熱(IH))され、適温配膳されるシステムですが、味付けで工夫している点はありますか?
「再加熱で水分が出るので、べたつきや味が薄まる事が課題でした。このことを考慮し、付け合せの野菜も、塩コショウだけではなくだしを入れ始めました。」やはり、大量調理では水分が課題ですね。その対策は、味が薄まらないだし使いでした!
写真左)スチコンは毎日大活躍!
写真右)再加熱シートで加熱します。温・冷の間違えがないように、2名以上で確認しています。
ーー献立で工夫されていることはありますか?
入所者さんの年齢が幅が広く、60代の方もいらっしゃるので、嗜好の幅が広い特徴があります。若い方からはパスタやピザが食べたいの声もあるので、行事食で対応するようにしています。高齢の方は、食べられる食材が限られてしまうので、同じ食材でもだしを変えたり、盛付を変えて雰囲気を変えたり、飽きないように工夫しています。食材は冬瓜が人気です。味が染みやすく、食べやすいので好評です。」
写真)かんぴょうと切干大根の中華煮
「丸鶏がらスープ」で柔らかく煮てあるので、高齢者にも食べやすい食感でした。
ーー味付けで工夫してる事や秘訣はありますか?
「たとえば、この2品、〈かんぴょうと切干大根の中華煮〉〈もやしとひき肉の味噌炒め〉には「CookDo®」麻婆豆腐用を使っていますが、中華煮の方は、「丸鶏がらスープ」を入れて利用者好みのオリジナルの味に変えています。味が決まりやすいので「中華味」が使いやすいけれど、「丸鶏がらスープ」も合わせて使うメニューもあります。メニューによって使い分けています。」なるほど!丸鶏がらスープでのばすことで、やさしい味付けにしたり、ダブルのだしでオリジナルの味付けにしてるのですね!これはおいしいです!
写真)もやしとひき肉の味噌炒め
中華と和風の中間のような味付けに調節されていて飽きがきません!
同じ日の献立 常食(左)、ソフト食(右)
ーー最近の取り組みなどあれば教えてください。
入所者の高齢化に伴い、常食を食べられなくなった方が増えました。でも、できるだけ食事で栄養とエネルギーを補給してほしいので、ソフト食を導入しています。ソフト食でのりまきにも挑戦しました。完食の方が多かったです。
ソフト食にも力を入れています。
ーーやわらかさへの課題解決・工夫は?
かための食材はよくゆでるなどで対応しています。ごぼうは千切りだと食べにくいので、ささがきにしています。これからの事を考えて、鶏肉・牛肉に対しての研究を始めました。
ーー利用者さんに喜ばれる食事づくりは?
「これが食べたいと声をかけられたものを出来るだけメニューに入れて、実現する時は事前に『来週よ~』と声をかける事。ちょっとしたことなのですが、喜びが倍増するようです。」 やはりコミュニケーションは大切ですね! 利用者さんの笑顔が目に浮かびます。
ーーさいごに.栄養士をやっていて、幸せって何ですか?
献立を担当する柏原さんは、「美味しいの声。あれ食べたい、これ食べたい」と声をかけられることが嬉しい。栄養ケアを担当する大垣さんは、「状態が悪くて食べられなかった人が食べられるようになると嬉しくなります」。